実験手法

用意するもの 実験手法
I) 器具・機械
・ PCR装置:すべての反応温度制御に用いる。

II) 試薬(注1)
・ エタ沈キャリアー(RNase free): エタ沈mate (#312-01791, WAKO)
・ Total RNA extraction: RNeasy (#75163, QIAGEN), ISOGEN (WAKO), Trizol (#15596-018, Life technologies)
・ PolyA selection: Oligo-dT cellurose (#20020, Collaborative), Oligo-Tex (#W9021B, 日本Roche)
・RNase inhibitor:RNasin (#N2111, Promega)
・ Bacterial Alkaline Phosphatase (BAP):BAP (#2110, TaKaRa)
・ Tobacco Acid Pyrophosphatase (TAP): タバコ細胞(BY-2)より文献2の方法に基づいて精製する。
・ RNA ligase:T4 RNA ligase (#2050, TaKaRa)
・ 合成オリゴリボヌクレオチド: TaKaRa
・ DNaseI(RNase Free):DNaseI (#2215, TaKaRa)
・ Spin Column: S-400HR (#27-5140, Pharmacia)
・Reverse Transcriptase:Superscript II (#18064-014, Life technologies)
・PCR kit:Gene Amp (#N808-0192, Perkin-Elmer)
・ 制限酵素:SfiI (New England Biolabs), DraIII (WAKO)
・ Size Fractionation: Gene Clean (#GL-1131-05, Bio101)
・ DNA ligation: ligation kit (#6021, TaKaRa)
・ 50 mM MgCl2
・ 5mM dNTP
・ 0.1 M NaOH
・ 7.5 M NH4OAc
・ 24mM ATP
・ 50% (w/v) PEG 8000 (#P2139, Sigma, 注2)

オリゴヌクレオチド配列
合成RNAオリゴ 1(5'−AGCAUCGAGUCGGCCUUGUUGGCCUACUGG−3')
oligo-dT アダプタープライマー 2(5'−GCGGCTGAAGACGGCCTATGTGGCC(T)17−3')
5'プライマーA (5'−AGCATCGAGTCGGCCTTGTTG−3')
3'プライマーB (5'−GCGCTGAAGACGGCCTATGT−3' )
EF1-αに特異的な3'プライマーC (5'−ACGTTCACGCTCAGCTTTCAG−3')
EF1-αに特異的な3'プライマーD (5'−AACACCAGCAGCAACAATCAG−3')

III) 反応溶液の調整2
5X BAP buffer  (最終濃度)
 1 M Tris-HCl (pH7.0)   250.0 μl (500 mM)
 14 M 2-mercaptoethanol   1.8 μl (50 mM)
 ddH2O    248.2 μl
 ────────────────────────────
  total   500.0 μl

5X TAP buffer
  3 M Sodium acetate (pH5.5)   41.7 μl (250 mM)
  14 M 2-mercaptoethanol   1.8 μl (50 mM)
  0.5M EDTA (pH8.0)   5.0 μl (5 mM)
  ddH2O   451.5 μl
  ────────────────────────────
  total   500.0 μl

10X Ligation buffer
  1 M Tris-HCl (pH7.0)   250.0 μl (500 mM)
  14 M 2-mercaptoethanol   3.6 μl (100 mM)
  ddH2O   246.4 μl
  ────────────────────────────
  total   500.0 μl

10X STE
  1 M Tris-HCl (pH7.0)   100.0 μl (100 mM)
  5 M NaCl   200.0 μl (1 M)
  0.5 M EDTA   20.0 μl (10 mM)
  ddH2O   680.0 μl
  ────────────────────────────
  total   1000.0 μl

 
実験操作 実験手法
i) total RNAの抽出
文献1に基づいて、組織、または培養細胞からtotal RNAを抽出する。組織の場合は1-2 g、培養細胞の場合は5X 106 - 1X 107を目安とする(注3)。

ii) polyA+ RNAの精製
文献1に基づいて、抽出したtotal RNA からpolyA+ RNAを精製する(注4)。

iii) BAP処理
 200-300 μgのpolyA+ RNAを108 UのRNasinを含むBAP buffer中、2.5 UのBAPで処理する。反応は、37℃で60分間行う。反応終了後、フェノール・クロロホルム抽出(注5)を1回、エタノール沈殿(注6)を1回行った後、80 % エタノールで洗浄する。

  ddH2O (+RNA)   67.3 μl
  5X BAP buffer   20.0 μl
  RNasin (40 U/μl)   2.7 μl
  BAP (0.25 U/μl)   10.0 μl
  ────────────────────────────
  total   100.0 μl

iv) TAP処理
 BAPで処理したRNAを1.0 UのTAP、108 UのRNasinを含むTAP buffer中、37 ℃で60分間反応させる。反応終了後、フェノール・クロロホルム抽出を1回、エタノール沈殿を1回行った後、80 % エタノールで洗浄する。

  ddH2O (+RNA)   75.3 μl
  5X TAP buffer   20.0 μl
  RNasin (40 U/μl)   2.7 μl
  TAP (20 U/μl)   2.0 μl
  ────────────────────────────
  total   100.0 μl

v) RNA ligation反応
 BAP、TAPで処理したRNAに400ngの合成オリゴ(塩基配列1)を加え250 UのT4 RNA ligaseと100 UのRNasinを含むligation buffer中、20℃で3時間反応させる。200 μlの水を加えてからフェノール・クロロホルム抽出を1回、エタノール沈殿を1回行う。

  ddH2O (+RNA)   11.0 μl
  合成RNAオリゴ (100 ng/μl)   4.0 μl
  10X ligation bufer   10.0 μl
  50 mM MgCl2   10.0 μl
  24 mM ATP   2.5 μl
  RNasin (40 U/μl)   2.5 μl
  T4 RNA ligase (25 U/μl)   10.0 μl
  50% PEG 8000   50.0 μl
  ────────────────────────────
  total   100.0 μl

vi) DnaseI処理
 40 UのRNase FreeのDNase I、108 UのRNasinを含むDNase buffer中、37 ℃で10分間反応させる。反応終了後、フェノール・クロロホルム抽出を1回、エタノール沈殿を1回行った後、80 % エタノールで洗浄する。

  ddH2O (+RNA)   70.3 μl
  50 mM MgCl2   16.0 μl
  1 M Tris-HCl (pH 7.0)   4.0 μl
  0.1M DTT   5.0 μl
  RNasin (40 U/μl)   2.7 μl
  DNase I (20 U/μl)   2.0 μl
  ────────────────────────────
  total   100.0 μl

vii) Spin Column精製
 45 μlのdH2Oに溶解し、10X STE buffer 5 μlを加えた後にSpin Columnで余剰のRNAオリゴ、及び分解されたDNAを除く。溶出液に対してエタノール沈殿を1回行った後、80 % エタノールで洗浄する。

  ddH2O (+RNA)   45.0 μl
  10X STE   5.0 μl
  ────────────────────────────
  total   50.0 μl

viii) 第一鎖cDNAの合成
 第一鎖cDNA合成は、oligo-dT アダプター (塩基配列2) をプライマーとして400 UのSuper Script II、40 UのRNasinを含むtotal volume 50 μlの反応溶液中で 行う。反応溶液組成はメーカーの推奨する組成に殉じる。エクステンション反応は42℃ で3時間以上行う(注7)。ミスプライミングを最小に抑えるために、アニーリング反応は行わない。反応終了後、50 μlの水を加えてからフェノール・クロロホルム抽出を1回行い、さらに2 μlの0.5 M EDTAを加え反応を完全に停止させる。

  dH2O (+RNA)   21.0 μl
  10X First Strand buffer   10.0 μl
  5 mM dNTP   8.0 μl
  0.1 M DTT   6.0 μl
  oligo-dT adapter primer (5 pmol/μl)   2.5 μl
  RNasin (40 U/μl)   1.0 μl
  Super Script II (200 U/μl)   2.0 μl
  ────────────────────────────
  total   50.0 μl

ix) 鋳型RNAのアルカリ加水分解
 total volume 100 μlの反応溶液中に0.1 M NaOHを15 μl加え、65 ℃で1時間反応させて鋳型RNAのアルカリ加水分解を行う。反応終了後に20 μlの1 M Tris-HCl (pH 7.0) を加えて反応溶液を中和する。酢酸アンモニウムを用いたエタノール沈殿を行ってRNA断片を除去した後(注8)、80 % エタノールで洗浄する。

x) 第一鎖cDNAの確認(EF1-αmRNAの5'端の増幅)
 合成した第一鎖cDNAを確認する目的で、全量の約1/50を用いて、合成オリゴに対応する5'プライマー(塩基配列A) と、EF1-αに特異的な3'プライマー (塩基配列C 、D) の組み合わせでPCRを行う(反応条件:95 ℃ 1分、52 ℃ 1分、72 ℃ 2分を30サイクル )。PCR産物の一部を2% アガロースゲル電気泳動して、増幅されたcDNA断片の長さ(プライマーCに対しては312 bp、プライマーDに対しては474 bp)を確認する。

xi) PCRによる第一鎖cDNAの増幅
 第一鎖cDNAの約1/5〜1/10を用い、合成オリゴに対応する5'プライマーAと、oligo-dTアダプターに対応する3'プライマーBによりPCRを行う(反応条件: 94 ℃ 1分、58 ℃ 1分 、72 ℃ 10分を5 - 15サイクル)。

  ddH2O (+1st cDNA)   52.4 μl
  3.3X Reaction buffer II     30.0 μl
  2.5 mM dNTP   8.0 μl
  25 mM Mg(OAc)2   4.4 μl
  primer (10 pmol/ml)   各 1.6 μl
  DNA polymerase    2.0 μl
  ────────────────────────────
  total   100.0 μl

xii) PCR産物のSize FractionationとSfiIによる切断
 PCR産物に対しフェノール・クロロホルム抽出を1回、エタノール沈殿を1回行った後、80 % エタノールで洗浄し、40 UのSfiIを含むtotal volume 100 μlの反応溶液中、50 ℃で一晩反応させて、プライマー内のSfiI部位を切断する。反応終了後、フェノール・クロロホルム抽出を1回、エタノール沈殿を1回行い、80 % エタノールで洗浄する。制限酵素消化したcDNAを1 % アガロースゲル電気泳動してSize Fractionationを行う。Gene Clean IIによりアガロースゲルから2 kb以上のcDNA画分を回収する(注9)。

xiii) cDNA断片のpUC19-fl2へのクローニング
 SfiIで切断したcDNAと、DraIIIで切断しstufferを除去したpME18S-FL3(注10)を用いて、ligation反応を行う。反応にはligation kitを用い、16 ℃で約3時間反応させる。反応終了後、フェノール・クロロホルム抽出を1回、エタノール沈殿を1回行い、80 % エタノールで洗浄する。20-50 μlのdH2Oに溶解し、完全長cDNA libraryとする(注11)。

実験操作上の注意点 実験手法
1.RNAに対して長時間、他段階にわたる酵素反応を行うので試薬の調整はRNase freeで行うことに特に留意する。またpHも厳密に調整する。
2.PEG 8000に対し(w/v)で50 %になるようdH2Oを加える。65 ℃でPEG 8000を完全に溶解した後、Millipore membrane (f = 0.20 mM)を用いてfiltrationにより滅菌する。
3.現在多数のRNA抽出kitが市販されているがその大部分はAGPC法を用いたものである。AGPC法を用いて得られるRNAはタンパク質、極度に断片化されたRNAやDNAといった不純物を大量に含む。大量に混入したこれらの不純物は、以下の反応において阻害的にはたらくために、得られるcDNA library中に不完全長mRNAやゲノムDNAに由来するクローンが増加する。そのため、大規模sequence解析に用いるcDNA librayを構築する際には、より純度の高いRNAを抽出し、出発材料として用いることが望ましい。現在、筆者はRNAeasy (QIAGEN)を愛用している。このkitはdetergentにより組織を溶解した後、添付のカラムによりRNAの精製を行うため、単にAGPC法を用いたものよりも純度の高いRNAを得ることが可能である。また培養細胞を用いる際にはNP-40を用いたcytoplasmic RNAの抽出法を用いることが可能である。この方法を用いて抽出したRNAは特に純度が高い (文献1参照)。
4.このステップに関しても現在様々なkitが市販されている。Oligo-dT担体としてBeadsを利用したものが現在主流であるが、これらのkitを用いて純度の高いpolyA+RNAを精製することは容易ではない。筆者は、Total RNAの量、純度に応じてカラムのBed VolumeやWash回数を適宜調整することを目的として、Oligo-dT celluroseを購入し、カラムに詰めてpolyA selectionを行っている。
5.断片化された核酸を除去するために酢酸アンモニウムを用いたエタノール沈殿を行う。アンモニウムイオンはT4 RNA ligaseの活性を阻害するため、ligation反応以前のエタノール沈殿には酢酸ナトリウムを用いる。
6.エクステンション反応を完全に終了させるために通常よりも長時間行う。
7.cDNA断片を完全に回収するため、長めに溶出時間をとる。
8.溶液に等量のフェノール・クロロフォルム(1:1)を加えた後、4 ℃で1分間遠心し、上層を抽出する。
9.最終濃度0.3 Mの酢酸ナトリウム(pH 5.5)、1 μlのエタ沈mate存在下、2.5倍量のエタノールを加え、4 ℃で10分間遠心する。上清を除去した後、ペレットを150 μlの80 %エタノールで洗浄する。沈殿の風乾は行わない。
10. 最終濃度2.5 Mの酢酸アンモニウム、1 μlのエタ沈mate存在下、2.5倍量のエタノールを加え、4 ℃で10分間遠心する。上清を除去した後、ペレットを150 μlの80 %エタノールで洗浄する。沈殿の風乾は行わない。
11. クローニングベクターの調整は以下のように行う。
a.12 UのDraIIIを含むtotal volume 100μlの反応溶液中、37 ℃で6時間反応させる。
b.切れのこりのベクター量を最小限に抑えるために制限酵素消化をもう一度繰り返す。
c.アガロースゲル泳動により目的とするバンド(3.0 kb)を回収する。Mockインサートとして利用するためstuffer部分のバンド(0.4 kb)も同時に回収する。
d.10-50 ngのベクターに対し、Mockインサート(+)と(-)でligation反応を行う。各々のligateを用いて大腸菌をtransformationし、生成するコロニー数を比較することにより、ベクターのbackgroundを算定する。Insert (-/+)でコロニー数の比が1/100以下になるまで制限酵素消化、アガロースゲル精製を繰り返す。
12. 通常2-300 μgのpolyA+ RNAから通常105 - 106程度のlibraryが得られる。
13. 完全長cDNA libraryの作製法は以下のような問題点を含んでいる。
a.第1鎖cDNA増幅の際用いるPCRはcDNAにmutationを導入することが知られている。
b.PCRは長さや配列に依存して、cDNA毎に増幅効率が異なるため、mRNAの発現頻度に関する情報がcDNA libraryから失われる。
c.制限酵素SfiIを用いるため、SfiI認識部位を内部に持つcDNAはクローニングされない。

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